2016-05-14

模様替え

部屋の家具の位置を変えたときの印象の変化は、大体いつも想像を超える。

知ってるものが、知ってる空間の中で動くのだからと、つい知った気になってしまう。住めば都というか、一度決めてしまうとそういうものとして受け入れてしまうし、それ以上を望む発想も中々生まれない。でもいざ試してみると、自分の想像が全く及んでいなかったことにたくさん気付く。

1つ前に住んでいた家があまりに狭くて、すぐ引っ越すことにはなったけど、家具レイアウトに関してとことんもがく機会を得たのは良かった。ふつうベランダ窓前の空間をベッドで潰したりはしないだろうけど、そんな配置すら試す必要に迫られて、結果としてそれ以上のメリットがあったりもした。何より、位置を変えるだけでこんなにも部屋が変わるのかという経験がたくさんできた。

思えば平面構成ですら実際に試して眺めてみないと分からないことが多いのに、空間が変わるのだから、想像できる方が不思議というものだ。たとえちょっと机とベッドの位置を入れ替えるだけでも、大げさに言うと空間が全く別の形になっているし、ドアや窓との関係も変われば導線や明るさも変わるし、ベッドや椅子からの景色だって全て前とは違うはずだ。

やってみると、まず思ったよりも強い新鮮さに驚くと思う。でも多分それ以上に大きいのは、気づきもしない自分の行動パターンへの影響だ。意識できる新鮮さは三日も経てば薄らぐだろうけど、無意識への影響は多分気付かないところでその先もずっと続くし、それは作ろうとして作れる類の自己変化ではない気がする。

例えば、窓の前から家具をどかせば、きっと開け閉めを頻繁にするようになる。部屋に入って最初に机が目に入れば、とりあえずその前に座ろうかという気にもなるし、逆にそれがベッドなら、まずは仮眠から入るかもしれない。椅子から本棚がよく目につく位置にあれば、手にとって目を通す機会も増えだろうし、ベッドからテレビが見えれば、中々布団から出られなくもなる。

そういう小さな行動変化の累積は、力いっぱい掲げた目標に対する能動的な変化よりも(特に意志の弱い自分にとっては)おそらくずっと大きい。部屋の模様替えだけでこれだけ変わる可能性があるのだから、住む場所や職場を変えたら、別人になったって不思議はない。なんだか環境に流され続けているようで無力感も覚えるけれど、なんとか無意識な自分をうまく誘導してあげることで、少ないエネルギーで望んだ変化を自分にもたらせる気もする。そしてそこにはきっと、意識的に動く余地がある。

2016-01-03

2016

明けましておめでとうございます。

昨年、幾度となく書き直しては下書きに入れていた暗めの記事を昨日は強引にまとめて上げてしまったけれど、別に今そんなに悩み苦しんでいるわけではないのです。去年同様、半分仕事しながらのぼっちな年越しだったけど、それなりにゆったり正月を過ごしてます。

この1年はとにかく引っ越しが多かった。3度引越して、4軒の家に世話になった。部屋の内見、賃貸契約、退去前立会、免許証の住所更新、転居届と転入届、国民健康保険の脱退と加入、郵便物の転送届、粗大ごみの手配、ダンボールの荷詰めと開封、水道・電気・ガス・インターネット系インフラの停止や開通工事… そんなことをひたすらループしていたら1年がおわった。地理的には祐天寺 (目黒)→ 阿佐ヶ谷(杉並) → 外神田(千代田) → 根津(文京) という感じ。その都度、生活の最適化を図ろうとした結果なのだけど、無駄が明らかに多かった感は否めない。

引越しの大きな理由の1つは、SOBOという場所に夏頃から席をお借りするようになったからだ。フリーランスとしての動き方は変わらないけれど、Asylの皆さんと職場を共にしながら、何かお手伝いできることがあれば映像担当としてメンバーに加えて頂いている。ギャラリーが併設されてるのもあって自然と多くの出会いがあるし、何より職場があって、日常的に顔を合わせる人がいることのありがたみが身にしみている。

仕事的にも印象深い仕事の多い年だったし、新しい縁にもたくさん恵まれた。
稲葉秀樹さんとの初仕事ANAYI、日本科学未来館での常設展「細胞たち研究開発中」、珍しくディレクションから編集までさせて頂いたWhO、贅沢な音源にひたすら編集を試した松本酒造、集団ダンスで現場が最高に楽しかったふわっとディスコ、池田さんと100人以上の笑顔と丁寧に向き合った福笑い、有楽町MUJIの大画面に大好きなマスクアニメーションで挑めたINFILL 0、最高の制作チームに参加させてもらったAudi@IAA、ソニービルにてプラネタリウムに投影して重ねたサウンドプラネタリウム、憧れだったNHK特番のオープニング映像… などなど。ここに書けない仕事でも濃くて新しい実りがたくさんあった。

特にAudiの一件は初めて外部の本格的なCGのワークフローに微力ながら貢献できたのと、Composition社の方々とドイツまでご一緒させて頂き、個人的には仕事絡みで初めての海外旅行出張となったのもあって強く印象に残った。ドイツとAudi、本当に美しかった。。

一方でプライベートの比重は過去最高に低かったように思う。。フリーなので誰に指示されたわけでもなく、自分で選択を重ねた結果なのだけれど、年末、いざプライベートの比重を上げようとしても何も思いつかず、なんだか思考停止してしまった。年始あたりになって、ふと何かを楽しんだり、楽しみを作るメンタル的体力が限りなくゼロであることに気付いて、これはサボりすぎたな、と反省した。

今年は少し仕事面での新しい動きもありそうなので、しばらくの間は少しペースダウンしつつ考える時間をとりたい。キャパに対する悩みはむしろ大きくなる一方だけれど、それでも落ち着いて考えないことには仕方がない。こんなに抱負がぼんやりとした新年も珍しいなと思いつつ、いろいろ見失わないように、呼吸を整えながら照準を定めていきたい。